大腸がん
大腸がん

大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)の粘膜(内側の壁)に発生する悪性腫瘍のことです。大腸は消化器官の最後の部分にあたり、水分や栄養の吸収・便の形成を担っています。大腸がんはその発生部位によって、「結腸がん」と「直腸がん」に分けられますが、総称して大腸がんと呼ばれます。
大腸がんは日本人に最も多いがんのひとつで、年間約15万人が大腸がんと診断されています。日本のがん罹患数では男性で3位、女性で2位、がん死亡数では女性で1位、男性で2位を占めています。近年は食生活の欧米化や生活習慣の変化などを背景に、増加傾向にあるとされています。一方で、早期に発見・治療することができれば、良好な経過が期待できるがんでもあります。
大腸がんの多くは、大腸の粘膜にできた大腸ポリープ(腺腫)が5〜10年かけてがん化することで発生すると考えられています。米国のNational Polyp Studyでは、ポリープを切除することで大腸がんの発症が約76〜90%減少し、長期追跡では大腸がん死亡率が約53%減少することが示されています。そのため、ポリープの段階で発見・切除することが、大腸がんの予防において非常に重要です。
大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、気づかないまま進行してしまうケースが少なくありません。症状が現れるころには、ある程度がんが進行していることもあります。以下のような症状がある場合は、早めに受診することをおすすめします。
これらの症状は大腸がん以外の疾患でも起こりえますが、「様子を見ていれば治るだろう」と放置せず、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。症状がない方でも、定期的な大腸カメラ検査による早期発見が大切です。早期大腸がん(粘膜内にとどまるがん)の5年生存率は約95%以上と非常に高いのに対し、進行がんでは予後が大きく異なります。
大腸がんの発症には、さまざまな要因が関係していると考えられています。以下のようなリスク要因に当てはまる方は、特に注意が必要です。
赤身肉・加工肉(ハムやソーセージなど)の過剰摂取、食物繊維の不足、高脂肪食などが大腸がんのリスクを高める可能性があるとされています。WHOは加工肉を「グループ1(ヒトに対して発がん性がある)」、赤身肉を「グループ2A(おそらく発がん性がある)」と分類しています。
過度な飲酒や喫煙は、大腸がんのリスク要因として報告されています。
身体活動量が少ない方や肥満の方は、大腸がんのリスクが高まる可能性があるとされています。
40歳を過ぎると大腸がんの発症リスクが高まり、特に50歳以上の方に多く見られます。
第一度近親者(親・兄弟姉妹・子)に大腸がんの方がいる場合、発症リスクが約2〜3倍高くなるとされています。遺伝性大腸がん(家族性大腸腺腫症・リンチ症候群など)が疑われる場合は、早めに専門医へご相談ください。
過去に大腸ポリープが見つかったことがある方は、再発・がん化のリスクがあるため、定期的な検査が重要です。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性的な炎症性腸疾患をお持ちの方は、大腸がんのリスクが高まるとされています(罹病期間10年以上の潰瘍性大腸炎ではリスクが顕著に上昇)。
リスク要因が重なるほど発症の可能性が高まることがあります。生活習慣の見直しとともに、定期的な大腸カメラ検査による早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
大腸がんを早期に発見するうえで、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)は最も有効な検査方法のひとつです。肛門から細長いカメラを挿入し、大腸の内部を直接観察することで、がんやポリープの有無・位置・大きさ・性状を詳しく確認することができます。
日本の検診ガイドラインでは、40歳以上の方に対して年1回の便潜血検査が大腸がん検診として推奨されています。便潜血陽性者のうち、大腸カメラ検査で大腸がんが見つかる割合は約3%、大腸腺腫(前がん病変)が見つかる割合は約30〜40%とされています。便潜血陽性の方は必ず大腸カメラ検査による精密検査を受けることが重要です。
大腸カメラ検査の大きなメリットは、観察と治療を同時に行える点です。検査中にポリープや早期がんが発見された場合、その場で切除処置(内視鏡的ポリープ切除術など)を行うことが可能なケースがあります。これにより、がんへの進行を予防したり、早期段階での治療につなげたりすることが期待できます。特に以下に当てはまる方は、定期的な大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。
検査に対して不安をお持ちの方も多いかと思いますが、当院では鎮静薬を使用することで、眠っている間に苦痛なく検査を受けていただける体制を整えております。さらにAI診断支援システム(Endo-BRAIN-EYE)も導入しており、医師の目とAIのダブルチェックで精度の高い観察を実現しています。「大腸カメラ検査が怖い」「以前つらかった」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
大腸がんの診断には、複数の検査が組み合わせて用いられます。
便に血液が混じっていないかを調べる検査です。自治体の大腸がん検診として広く実施されており、自宅で採取した便を提出するだけで受けられます。陽性(要精密検査)となった場合は、大腸カメラ検査による精密検査が必要です。ただし、がんやポリープがあっても出血していない場合は陰性になることがあるため、この検査だけで大腸がんを完全に否定することはできません。
大腸の内部を直接観察できる最も確実な検査です。病変が疑われる場合は組織の一部を採取(生検)し、病理検査によって良性・悪性の確定診断を行います。早期がんやポリープはその場で切除可能なケースもあります。
バリウムと空気を大腸に注入し、X線で大腸全体の形状を確認する検査です。現在は大腸カメラ検査が主流となっており、補助的に用いられることがあります。
大腸がんと診断された後、がんの進行度(ステージ)や他臓器への転移の有無を調べるために使用されます。治療方針を決定するうえで重要な検査です。
血液検査によってがんに関連する物質(CEA・CA19-9など)を測定します。診断の補助や治療効果の確認・経過観察に活用されます。
大腸がんの治療方法は、がんの進行度(ステージ)・発生部位・患者さんの状態などを総合的に判断して決定されます。主な治療法は以下のとおりです。
早期大腸がん(粘膜内にとどまるがん)の場合、大腸カメラを用いた内視鏡的切除術(EMR・ESDなど)によって、体への負担が少ない治療が行える可能性があります。多くの場合、日帰りまたは短期入院での対応が期待できます。
がんが粘膜より深く浸潤している場合や、内視鏡的治療が困難な場合には、外科手術によってがんを含む腸管を切除します。近年は腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けて行う手術)が広く普及しており、体への負担の軽減が期待されています。
進行・再発大腸がんに対して、抗がん剤を用いた治療が行われます。手術後の再発予防(補助化学療法)として用いられることもあります。近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場で治療成績が向上しています。
主に直腸がんに対して、手術前後の治療として用いられることがあります。化学療法と組み合わせて行われるケースもあります。
大腸がんは、早期に発見・治療することで良好な経過が期待できます。ステージⅠ(早期)の5年生存率は約94%、ステージⅡは約88%、ステージⅢは約77%、ステージⅣは約20%と報告されており、早期発見の重要性が明らかです。
当院院長は消化器外科専門医として大腸がん手術にも携わってきた経験から、「内視鏡的治療が可能か外科手術が必要か」の判断にも自信を持って対応します。手術が必要な場合は慶應義塾大学病院やがん研有明病院など適切な連携先にスムーズにご紹介します。また、他院で大腸がんの手術を受けられた方の術後フォロー(定期的な内視鏡サーベイランス・経過観察)も引き受けています。
以下に当てはまる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
大腸がんは、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、良好な経過が期待できます。「症状がないから大丈夫」と思わず、定期的な大腸カメラ検査を習慣にすることが、大腸がんから身を守る大きな一歩となります。当院では、患者さんが安心して検査・治療を受けていただけるよう、丁寧な説明と体への負担が少ない対応を心がけております。気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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