感染性腸炎・虚血性腸炎
感染性腸炎・虚血性腸炎

「突然お腹が痛くなった」「血便が出た」「激しい下痢が続いている」こうした症状が現れたとき、その原因として多く考えられるのが感染性腸炎と虚血性腸炎です。どちらも腸に炎症が起きる病気ですが、原因・特徴・治療方法が異なります。
細菌やウイルスなどの病原体が口から体内に入り、小腸や大腸に炎症を引き起こす病気です。いわゆる「お腹の風邪」や「食中毒」がこれにあたります。夏場は細菌性、冬場はウイルス性が流行しやすく、誰でもかかる可能性がある身近な病気です。
大腸への血流が一時的に不足することで大腸の粘膜に炎症が生じる病気です。中高年(50歳以上)の女性に多く、「突然の左下腹部の痛みと血便」がほぼ同時に起こるのが特徴です。便秘・動脈硬化・脱水などが背景にあることが多く、生活習慣との関連が深い病気です。
どちらも症状が似ているため自己判断が難しく、正確な診断のためには医療機関での検査が重要です。
両疾患に共通して見られる症状と、それぞれに特徴的な症状があります。
「突然お腹が痛くなって血便が出た」という場合は特に早めの受診が必要です。また、下痢・嘔吐が続くと脱水症状(口が乾く・尿が出ない・ぐったりするなど)が進む危険があるため注意が必要です。
感染性腸炎の原因は「細菌」「ウイルス」「寄生虫」に大きく分けられます。
加熱不十分な鶏肉・牛肉などから感染します。日本で最も多い細菌性腸炎の原因で、潜伏期間は2〜7日と長めです。
生卵・生肉・乳製品などから感染します。激しい下痢・腹痛・高熱が特徴で、潜伏期間は6〜72時間です。
血便を引き起こし、約5〜10%で重症化して溶血性尿毒症症候群(HUS)という合併症を起こすことがあります。お子さんや高齢者は特に注意が必要です。
おにぎりやお弁当などに繁殖しやすく、食後30分〜6時間という短時間で症状が出るのが特徴です。
冬場(11〜3月)に流行する代表的なウイルスで感染力が非常に強く、突然の激しい嘔吐・下痢が起こります。症状は通常24〜48時間で軽快します。
乳幼児に多く、白っぽい下痢と嘔吐が特徴です。ワクチンで予防可能で、2020年から定期接種化されています。
虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に低下することで起こります。「虚血(きょけつ)」とは、血液の流れが滞り臓器が酸素不足になる状態のことで、心臓でいえば狭心症、脳でいえば脳梗塞に似たメカニズムが大腸で起こるイメージです。
硬い便を押し出すために腸が強く収縮し、腸の血管が圧迫されて血流が低下します。虚血性腸炎の患者さんに便秘持ちの方が多いのはこのためです(日本の慢性便秘症有病率は約14%)。
加齢や生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)によって血管が硬くなると、大腸への血流が低下しやすくなります。
体の水分が不足すると血液量が減り、腸への血流が不足しやすくなります。激しい運動後・入浴後・下痢後などに発症することがあります。
喫煙・不整脈・過度なダイエットなどもリスク要因とされています。
中高年の女性に多い病気ですが、便秘がちな若い方にも起こることがあります。「突然の腹痛と血便」という症状の組み合わせは虚血性腸炎の典型的なサインです。多くの場合は左側結腸(特にS状結腸)に発症します。
どちらの腸炎も症状が似ているため、正確な診断のために複数の検査が行われます。
いつ・どのような症状が出たか、食事の内容・周囲の感染状況・持病・便秘の有無などを詳しく確認します。症状の出方のパターンが診断の大きな手がかりになります。
炎症の程度(CRP・白血球数)・貧血・脱水・電解質のバランスなどを調べます。
原因となる細菌・ウイルス・寄生虫の有無を調べます。感染性腸炎の原因菌の特定に役立ちます。
大腸の内部を直接観察し、炎症の範囲・程度・出血部位などを確認します。感染性腸炎と虚血性腸炎の鑑別(見分け)や、炎症性腸疾患・大腸がんなど他の病気との区別に非常に重要な検査です。虚血性腸炎では典型的に縦走潰瘍が左側結腸に認められます。症状が長引く場合や血便が続く場合に特に必要となります。当院では鎮静薬を使うことで苦痛を和らげながら受けていただけます。
腸の状態や周囲の臓器への影響を確認します。虚血性腸炎では腸壁の肥厚(壁が厚くなった状態)が見られることがあります。
最も重要な治療です。下痢・嘔吐による脱水を防ぐため、経口補水液(OS-1など)やスポーツドリンクをこまめに補給します。飲めない場合や脱水が進んでいる場合は点滴が必要です。
症状が落ち着いてきたら、おかゆ・うどん・豆腐など消化の良いものから少量ずつ始めます。脂っこいもの・乳製品・アルコールは回復するまで控えましょう。
整腸剤・吐き気止めなどで症状を和らげます。細菌性で重症の場合は抗菌薬が使用されます。ただしO157などの腸管出血性大腸菌感染症では、抗菌薬の使用によってHUSのリスクが高まることがあるため、自己判断での服用は厳禁です。
多くの場合、数日〜1週間程度の治療で症状は改善し、85〜90%は保存的治療で軽快します。ただし、腸が壊死するなど重篤な場合(壊死型)は緊急手術が必要になることもあります。
以下に当てはまる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
「お腹の風邪くらいで受診するのは大げさかな」と思われる方もいらっしゃいますが、脱水の進行・重症化・他の病気の見落としを防ぐためにも、気になる症状があれば早めにご相談ください。当院では、症状に合わせた丁寧な診察と適切な検査・治療をご提供できるよう努めております。どうぞお気軽にお声がけください。
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