ピロリ菌感染・胃がん
ピロリ菌感染・胃がん

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは、胃の粘膜に住み着く細菌のことです。強い酸性環境である胃の中で生き続けられる特殊な細菌で、感染すると慢性的な胃の炎症を引き起こします。
ピロリ菌と胃がんの関係は非常に深く、日本人を対象とした追跡研究では、ピロリ菌感染者の約2.9%が約8年間の追跡で胃がんを発症した一方、未感染者からは胃がんが発生しなかったと報告されています。ピロリ菌に感染すると慢性胃炎が続き、胃の粘膜が萎縮(薄くなること)していきます。この「萎縮性胃炎」の状態が長年続くことで、胃がんが発生しやすい環境が作られると考えられています。
日本では現在も約3,500万人がピロリ菌に感染していると推計されています。特に衛生環境が整っていなかった時代に幼少期を過ごした中高年の方に感染者が多い傾向がありますが、若い方でも感染していることがあります。ピロリ菌感染は自覚症状がほとんどなく、知らないうちに感染している方がほとんどです。だからこそ、一度は検査を受けることが大切です。
ピロリ菌感染は、多くの場合に自覚症状がほとんどありません。「症状がないから感染していない」とは言い切れないのが、ピロリ菌の怖いところです。感染が続いて慢性胃炎・胃潰瘍などが起きると、以下のような症状が現れることがあります。
胃がんは早期の段階ではほぼ無症状です。日本では年間約12万人が胃がんと診断されており、男性のがん罹患数の3位、女性で4位を占めます。進行すると体重減少・食欲不振・持続する胃痛・黒い便などが現れますが、症状が出てからでは進行していることも多いため、定期的な胃カメラ検査による早期発見が非常に重要です。
ピロリ菌は主に幼少期(5歳頃まで)に口から感染すると考えられています。成人してからの感染はまれとされており、衛生環境が整っていなかった時代に子ども時代を過ごした方に感染者が多い傾向があります。主な感染経路として以下のことが考えられています。
衛生管理が不十分な水や食べ物を口にすることで感染するとされています。上下水道が整備される前の環境で育った方は感染リスクが高かったと言われています。
感染している親から子どもへ、口移しや食器の共有などを通じて感染することがあります。
ピロリ菌は唾液中にも存在するため、口から口への接触が感染経路になることがあると考えられています。
近年は衛生環境の改善によって若い世代の感染率は低下していますが、家族に感染者がいる場合は検査を受けることをおすすめします。また、ピロリ菌感染は一度感染すると自然に治ることはほとんどないため、感染が判明したら除菌治療を受けることが重要です。
ピロリ菌感染や胃がんの早期発見において、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)は最も重要な検査です。口または鼻からカメラを挿入し、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察することで、炎症・潰瘍・萎縮性胃炎・ポリープ・がんなどを詳しく確認することができます。
日本の検診ガイドラインでは、胃がん検診として50歳以上に2〜3年ごとの胃カメラまたはバリウム検査が推奨されています。胃カメラ検診により胃がん死亡率は約30〜70%減少することが報告されています。胃カメラ検査の大きなメリットは、観察と診断・治療を同時に行える点です。
「胃カメラは苦しそう」「怖い」と感じる方も多いですが、当院では鎮静薬を使うことで眠っている間に検査を受けていただくことができます。さらにAI診断支援システム(Endo-BRAIN-EYE)も導入しており、医師の目とAIのダブルチェックで精度の高い観察を実現しています。特に以下の方は定期的な胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
ピロリ菌感染・胃がんの診断には、以下の検査が行われます。
胃の粘膜を少量採取してピロリ菌の有無を直接調べます。最も正確な方法のひとつです。
専用の薬を飲んで一定時間後に息を吐き、呼気中の成分を調べる検査です。体への負担が少なく、除菌後の確認にもよく使われます。
ピロリ菌に対する抗体を調べます。感染の有無をスクリーニングするために広く行われています。
便の中にピロリ菌の成分が含まれているかを調べます。
胃の内部を直接観察し、病変の有無・大きさ・性状を確認します。疑わしい部分があれば生検(組織採取)を行い、病理検査で良性・悪性を判断します。
バリウムを飲んで胃の形を確認する検査です。健診でよく使われますが、病変が見つかった場合は胃カメラ検査による精密検査が必要になります。
胃がんの進行度(ステージ)や他臓器への転移の有無を調べるために行われます。
CEA・CA19-9などを測定します。補助的な指標として使われます。
ピロリ菌が検出された場合は、除菌治療が推奨されます。2種類の抗菌薬と胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬またはP-CAB)を1週間服用する「一次除菌」が基本で、約90%以上の方で除菌成功が期待できます。一次除菌が成功しなかった場合は、抗菌薬の種類を変えて「二次除菌」を行います。除菌治療を受けることで胃がん発症リスクは約3分の1に低減します。除菌のメリットは大きく、以下のことが期待できます。
除菌後も胃がんのリスクがゼロになるわけではなく、これまでに蓄積された萎縮による発がんリスクは残存します。除菌後も年1回の定期的な胃カメラ検査による経過観察を続けることが重要です。
胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)・発生部位・患者さんの状態を総合的に判断して決定されます。
早期胃がんで一定の条件を満たす場合、胃カメラを使って胃の内側から病変を切除します。お腹を切らずに治療できるため、体への負担が少ない方法です。
進行した胃がんに対して、胃の一部または全部を切除する手術が行われます。腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けて行う手術)も広く行われており、体への負担が軽減されています。
手術が難しい進行がんや再発がんに対して使用されます。近年は新しい薬が増え、治療の選択肢が広がっています。
胃がんに対する放射線療法は限られた状況で行われます。
胃がんは早期に発見するほど治療の選択肢が広がり、良好な経過が期待できます。当院院長は消化器外科専門医として胃がん手術にも携わってきた経験から、「内視鏡的切除が可能か外科手術が必要か」の判断にも自信を持って対応します。手術が必要な場合は慶應義塾大学病院やがん研有明病院など適切な連携先にご紹介します。
以下に当てはまる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
ピロリ菌感染は自覚症状がなくても着実に胃にダメージを与え続けます。「症状がないから大丈夫」ではなく、一度検査を受けて感染の有無を確認することが、将来の胃がん予防につながります。当院では、鎮静薬を使った苦痛の少ない胃カメラ検査とピロリ菌検査を行っております。気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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