2026年8月06日

健康診断で「脂肪肝」と言われても、痛くもかゆくもないので、つい後回しにしがちです。けれど近年、脂肪肝は「肝臓だけの問題ではない」ことが分かってきました。何が問題で、どこからが要注意なのか。できるだけやさしく整理します。
「脂肪肝ですね」と健診で言われて、「お酒はそんなに飲まないのに、なぜ?」と不思議に思った方も多いのではないでしょうか。実は、脂肪肝の多くはお酒とは関係なく、肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常といった体質・生活習慣を背景に起こります。
この「お酒以外が原因の脂肪肝」は、2023年から国際的に MASLD(マッスルディー/代謝機能障害関連脂肪性肝疾患) という新しい名前で呼ばれるようになりました。日本でも2026年に診療ガイドラインが改訂され、脂肪肝を「全身の病気の入り口」としてとらえ直す動きが進んでいます。
- この記事でわかること
- 脂肪肝で肝臓に何が起きているのか
- 「放っておいてよい脂肪肝」と「注意すべき脂肪肝」の見分け方
- 今日から始められる対策
脂肪肝とは、どんな状態?
脂肪肝とは、その名のとおり肝臓の細胞に脂肪(中性脂肪)がたまった状態です。健康な肝臓の脂肪はわずかですが、食べ過ぎや運動不足、体質などによって、肝臓は“脂肪の倉庫”のようになっていきます。目安として肝細胞の5%以上に脂肪がたまると、脂肪肝と診断されます。

やっかいなのは、脂肪肝の段階ではほとんど自覚症状がないことです。だるさや痛みが出ないため、「たいしたことない」と感じてしまいます。しかし肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ、症状が出るころにはかなり進行していることも少なくありません。
なぜ「放っておいてはいけない」のか
脂肪肝の一部は、年月をかけて肝臓の炎症(MASH)→ 線維化(肝臓が硬くなる)→ 肝硬変 → 肝がんへと進むことがあります。ゆっくりとした変化なので気づきにくいのですが、この流れが脂肪肝を軽視できない最大の理由です。

そしてもう一つ、近年とても重視されているのが「肝臓以外への影響」です。MASLDのある方は、肝臓の病気だけでなく、次のようなリスクが高まることが分かっています。
- 心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患が増える
- 2型糖尿病を発症・悪化しやすい
- 慢性腎臓病のリスクが上がる
- 肝臓以外のがんの頻度も高まると報告されている
つまりMASLDは、「体全体の代謝がうまくいっていないサイン」でもあるのです。実際、MASLDの方が最終的に亡くなる原因として、肝臓の病気そのものより心血管疾患のほうが多いことが知られています。脂肪肝を入り口に全身を見直すことに、大きな意味があります。
「様子見でよい」か「要注意」かの分かれ目
ここが、この記事のいちばん大事なところです。脂肪肝と言われた方が本当に知りたいのは、「自分はどのくらい心配なのか」ですよね。
実は、脂肪肝で本当に気をつけたいのは、脂肪の量そのものだけではありません。もう一つの大事なポイントが 「肝臓がどれくらい硬くなっているか(線維化の程度)」 です。硬くなっていなければ生活改善で十分に戻せますし、硬くなり始めていれば早めの対策が必要になります。脂肪の量と硬さ。この2つを知ることが、いまの肝臓の状態を正しくつかむ鍵になります。
当院では、エコー(超音波)で「肝硬変(硬さ)」も「脂肪肝(脂肪の量)」も数値で測定できます。痛みも針もなく、ベッドに横になっている10分程度の間に、いまの肝臓の状態を“見える化”します。健診で脂肪肝を指摘された方が、次の一歩として受けていただきたい検査です。

数値でわかることの大きな利点は、「治療の効果が目に見える」ことです。生活改善に取り組んだあと、もう一度測れば、脂肪の量や硬さがどう変わったかを数字で確認できます。「なんとなく続ける」より、変化が見えるほうが、はるかに励みになります。
とくに注意したい方
次に当てはまる方は、脂肪肝を「様子見」にせず、一度きちんと調べることをおすすめします。
糖尿病がある/肥満(とくに内臓脂肪型)/健診で肝機能(AST・ALT)がくり返し高い/血小板数が低め/家族に肝臓病の方がいる
では、どうすればいい?
ここまで少し不安をあおってしまったかもしれません。でも、良い知らせがあります。脂肪肝は、早い段階なら“戻せる”病気だということです。特別な薬の前に、まず効果が確立しているのは生活習慣の見直しです。
体重を「5〜7%」減らす
これが最も確実な治療です。体重の5%減で肝臓の脂肪が、7〜10%減で炎症や線維化まで改善しやすいと報告されています。70kgの方なら、まず3〜5kgが目標です。
「何を減らすか」を意識する
とくに甘い飲み物・お菓子(果糖)の取りすぎは肝臓に脂肪をためやすくします。野菜・魚・全粒穀物・オリーブオイル中心の「地中海食」パターンがすすめられます。

体を動かす
週150分ほどの早歩きなどの有酸素運動に、軽い筋トレを加えると効果的です。体重があまり減らなくても、運動そのものが肝臓の脂肪を減らすことが分かっています。

お酒とのつき合い方を見直す
MASLDはお酒が主因ではありませんが、飲酒が加わると進行を早めます。量を意識することも大切な一歩です。
糖尿病や肥満の程度によっては、近年お薬による治療(血糖や体重に働きかける薬など)が選択肢になることもあります。ただし薬はあくまで生活改善と組み合わせて使うもので、自己判断ではなく主治医と相談して決めるものです。
よくあるご質問
お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
脂肪肝の多くはお酒とは無関係で、肥満・糖尿病・脂質異常などの代謝の乱れが原因です。これがMASLDと呼ばれるタイプで、決して珍しいものではありません。
痩せているのに脂肪肝と言われました。ありえますか?
はい、あります。見た目が細くても内臓脂肪が多い方や、体質的に脂肪肝になりやすい方がいます。「痩せているから大丈夫」とは限らないため、指摘されたら一度調べることをおすすめします。
脂肪肝は治りますか?
早い段階(線維化が進む前)であれば、生活改善によって脂肪肝も炎症も改善が期待できます。だからこそ、進む前に気づくことが大切です。
症状が何もありません。それでも受診すべき?
脂肪肝は症状が出にくいのが特徴で、症状がないことは「軽い」ことを意味しません。健診で指摘された場合や、糖尿病・肥満のある方は、症状がなくても一度評価を受ける価値があります。
- この記事のまとめ
- 脂肪肝(MASLD)は、お酒以外の代謝の乱れで起こることが多い
- 症状がなくても、肝硬変・肝がん、さらに心臓・血管の病気につながることがある
- 心配の分かれ目は「脂肪の量」と「肝臓の硬さ(線維化)」。当院ではエコーで両方を数値化できます
- 早い段階なら、体重5〜7%減・食事・運動で“戻せる”病気
- 糖尿病・肥満・肝機能異常のある方は、様子見にせず一度ご相談を
健診で脂肪肝を指摘された方、数値が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。当院のエコー検査で、肝臓の脂肪の量と硬さを数値で確認し、いまの状態を一緒に見ていきましょう。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。ご自身の症状や検査結果については、必ず医療機関でご相談ください。本文中の医学的内容は、日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD診療ガイドライン」などの考え方を参考にしています。