2026年9月04日

健診や人間ドックの腹部エコーで「胆石がありますね」と言われ、「症状がなければ様子を見ましょう」と説明されたまま、何年も経っていませんか。その説明は正しいものです。ただし、「様子を見る」というのは「何もしない」という意味ではありません。そして、ご自身では無症状のつもりでも、実はそうではない方が少なからずいらっしゃいます。
胆石は珍しい病気ではありません。日本人のおよそ10人に1人が持っているとされ、その約70%は症状のないまま、検査でたまたま見つかります。ですから「胆石がある」と言われただけで、深刻に受け止める必要はありません。
この記事でお伝えしたいのは、「経過観察でよい方」と「そろそろ考えたほうがよい方」の境目です。その境目は、多くの方が思っているより手前にあります。
- この記事でわかること
- 無症状の胆石は、本当に放っておいてよいのか
- ご自身では気づきにくい「胆石発作」のサイン
- 手術を考えたほうがよいのは、どういう場合か
胆石は、なぜできるのか
胆嚢は、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮しておく、洋なしのような形をした袋です。食事、とくに脂っこいものを食べると縮んで、胆汁を十二指腸へ送り出します。
胆汁の成分のバランスが崩れると、その中のコレステロールなどが固まって石になります。これが胆石です。できやすい条件としては、次のようなものが知られています。
- 40代以降/年齢とともに頻度が上がります
- 女性/女性ホルモンの影響で、男性よりできやすいとされます
- 肥満、脂質異常症、糖尿病/代謝の状態が影響します
- 急激な減量/短期間で体重を落とすと、かえって胆石ができやすくなります
- 食事を抜くことが多い/胆嚢が縮む機会が減り、胆汁がよどみます

なお、できてしまった胆石を薬で溶かすことは、ごく一部の条件を満たす場合に限られます。多くの胆石は薬では消えません。食事に気をつければ石がなくなる、ということもありません。
症状がなければ、経過観察でよい
まず安心していただきたいことをお伝えします。症状のない胆石に対して、一律に手術をする必要はありません。これは日本消化器病学会の「胆石症診療ガイドライン2021」でも、一律の治療介入は利益が少ないとされている点です。
実際の数字を挙げると、無症状で見つかった胆石を平均8.7年みていった研究で、症状が出たのは約20%でした。1年あたりに直すと、重い症状を起こす方は1〜2%程度です。つまり大多数の方は、何事もなく過ごされます。
ただし「経過観察」というのは、定期的に見ることを含めての言葉です。年に1回は腹部エコーで、石の大きさや数、胆嚢の壁の状態を確認しておくことをおすすめします。健診のエコーを毎年受けている方は、それで十分なこともあります。
その「無症状」は、本当に無症状ですか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
診察でよく伺うのが、「症状はありません。ああ、そういえば前に一度だけ、夜中にお腹が痛くなったことはありますけど、朝には治っていたので」というお話です。
それは「無症状」ではありません。胆石発作の可能性が高い出来事です。胆石の痛みは、石が胆嚢の出口に一時的にはまり込んで起こります。石がずれれば痛みは治まるので、「我慢していたら治った」という経過をたどるのが典型的です。だから多くの方が、受診しないまま忘れてしまいます。
次のような経験があれば、それは胆石発作かもしれません脂っこい食事のあとや夜間に、みぞおちや右の肋骨の下が痛くなった/その痛みが右の肩や背中に抜けるように感じた/数十分から数時間で自然に治まった/痛みとともに吐き気があった/過去に「胃けいれん」「食あたり」と言われて済ませたことがある。一度でも心当たりがあれば、次の受診のときにお伝えください。
なぜこれが大切かというと、一度発作を起こした胆石は、また起こす可能性があるからです。そして次に起こるときが、同じように数時間で治まるとは限りません。
手術を考えたほうがよい場合

症状のない胆石は経過観察が原則です。そのうえで、次のような場合には手術を検討します。
- 胆石発作を起こしたことがある/症状のある胆石に対しては、腹腔鏡下胆嚢摘出術がすすめられます。これはガイドラインでも、手術以外の治療より推奨されています
- 陶器様胆嚢(とうきようたんのう)/胆嚢の壁に石灰が沈着した状態です。胆嚢がんを合併する割合が約6%と報告されており、手術が検討されます
- 石が胆嚢いっぱいに詰まっている(充満結石)/胆嚢の中が観察できず、がんが隠れていても見つけられません
- 胆嚢ポリープを合併している/大きさによっては手術の対象になります
- 胆嚢の壁が厚くなってきている/慢性的な炎症の可能性があります
ひとつ、誤解のないようにお伝えしておきます。「胆石があるとがんになる」わけではありません。ガイドラインでも、胆嚢結石が胆嚢がんの明らかな危険因子だという証拠はない、とされています。手術を検討するのは、あくまで上のような特定の所見がある場合です。石があるというだけで心配しすぎないでください。
放っておくと、何が起こりうるか
大多数の方は何事もなく経過しますが、起こりうることは知っておいていただきたいと思います。
- 急性胆嚢炎/石が出口に詰まったまま戻らず、胆嚢に炎症が起きます。強い痛みと発熱を伴い、入院が必要になります
- 総胆管結石・胆管炎/石が胆管に落ちると、黄疸や発熱を起こします。重症化すると命に関わることがあり、緊急の処置が必要です
- 胆石性膵炎/石が膵液の出口をふさいで膵炎を起こします。重症化することがあります
そしてもう一つ、外科医としてお伝えしておきたいことがあります。炎症を起こしてからの手術は、落ち着いているときの予定手術に比べて、周囲との癒着などにより難しくなることがあります。入院期間が延びたり、開腹手術に切り替える必要が生じたりすることもあります。手術を受けるのであれば、症状が落ち着いている時期に計画して行うほうが、体への負担は小さくなります。「そのうち考えよう」と先送りしている間に、選べる条件が狭まっていくことがあるのです。
当院でできること
当院では、腹部エコーで胆嚢の状態を詳しく評価します。石の大きさと数、胆嚢の壁の厚さ、石灰の沈着、ポリープの有無、そして胆管が広がっていないかまで確認します。痛みはなく、10分から15分程度です。

院長は日本消化器外科学会 消化器外科専門医、日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医として、これまでに1500件以上の手術に携わってきました。胆嚢の手術も、その中心的な領域のひとつです。
手術が必要と判断した場合、院長が連携病院で執刀を担当することができます。「クリニックで診断を受け、紹介先で初めて会う医師に手術を受ける」のではなく、診断からその後まで、同じ医師が続けて担当します。手術の前に不安な点をご相談いただき、術後もこのクリニックで経過を診ていくことができます。もちろん、他院での手術をご希望の場合や、より適した施設があると判断した場合には、そちらへご紹介します。
「手術と言われるのが怖くて受診できない」という方もいらっしゃいますが、受診したからといって、すぐ手術になるわけではありません。むしろ大半の方には「経過観察で大丈夫です」とお伝えすることになります。まずは今の状態を正確に知るところから始めましょう。
手術について
胆石の手術は、石だけを取り出すのではなく、胆嚢ごと摘出します。石だけ取っても、胆嚢が残っていればまた石ができるためです。
現在の標準は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。おなかに数か所の小さな穴を開け、カメラを見ながら胆嚢を摘出します。開腹手術に比べて傷が小さく、回復が早いのが特徴です。入院期間は数日程度で、状態によって前後します。
もし詳細を知りたい方がいましたらこちらもご参考にしてください
https://relierea.com/medical/surgical-consultation/
「胆嚢を取ってしまって大丈夫なのか」とよく聞かれます。胆嚢は胆汁をためておく袋で、つくる臓器ではありません。摘出しても肝臓は胆汁をつくり続け、直接十二指腸へ流れるようになります。日常生活に大きな支障が出ることはほとんどありませんが、しばらくの間、脂っこいものを食べると下痢をしやすくなる方がいらっしゃいます。多くは時間とともに落ち着きます。
よくあるご質問
5年前に胆石と言われたきり、何もしていません。今からでも受診したほうがよいですか?
ぜひ一度お越しください。5年の間に石が大きくなっていたり、数が増えていたり、胆嚢の壁の状態が変わっていることがあります。何も変わっていなければ、それが確認できるだけでも意味があります。以前の検査結果をお持ちいただけると、比較ができて助かります。
薬で溶かすことはできませんか?
胆石を溶かす薬はありますが、効果が期待できるのは、コレステロールを主成分とする小さめの石で、胆嚢の働きが保たれているなど、いくつかの条件を満たす場合に限られます。また溶けても再発することがあります。適応があるかどうかは、エコーの所見をみて判断します。
食事で気をつけることはありますか?
脂肪の多い食事は胆嚢を強く収縮させるため、発作の引き金になることがあります。極端な制限は必要ありませんが、揚げ物や脂の多い肉が続くときは意識してみてください。また、食事を抜くと胆汁がよどみやすくなるので、規則正しく食べることも大切です。急激なダイエットは、かえって胆石をつくりやすくします。
痛みが出たら、その時に受診すればよいのでは?
痛みが出てからでも治療はできます。ただ、炎症が起きた状態での手術は、落ち着いているときより難しくなることがあります。また、痛みは夜間や休日に起こることも多く、そうなると救急受診になります。すでに一度発作を経験されている方は、落ち着いている今のうちにご相談いただくほうが、選べる方法が多く残ります。
胆嚢ポリープも指摘されています。関係ありますか?
胆石と胆嚢ポリープは併存することがあります。ポリープは大きさと形によって方針が変わり、一定の大きさを超えるものや、急に大きくなるものは手術の対象になります。どちらもエコーで同時に評価できますので、まとめてご相談ください。
健診のエコーを毎年受けています。それで十分ですか?
石の大きさや数を追うだけであれば、それで足りることもあります。ただし健診のエコーは限られた時間で全体を見るものなので、胆嚢の壁の状態やポリープの評価が十分でないこともあります。一度きちんと評価しておくと、その後は健診で追っていける場合もあります。
- この記事のまとめ
- 胆石は日本人の約10人に1人。約70%は無症状で見つかります
- 症状がなければ、一律に手術する必要はありません。経過観察が原則です
- ただし「夜中に痛くなったが朝には治った」は、無症状ではなく発作の可能性があります
- 発作の経験がある方、陶器様胆嚢や充満結石のある方は、手術を検討します
- 炎症を起こしてからの手術は難しくなることがあります。落ち着いているうちの相談を
- 受診したからといって、すぐ手術になるわけではありません
「胆石があります」と言われたまま、何年も気になっている方は、一度ご相談ください。今の状態を数字と画像で確認するところから始めましょう。ご予約は画面右下の「WEB予約」または「LINE予約」からお進みいただけます。JR総武線「津田沼」駅から徒歩2分です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。治療方針は、症状や画像所見、全身の状態をふまえて医師が判断します。本文中の医学的内容は、日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン2021(改訂第3版)」の記載を参考にしています。