2026年8月09日

前回の記事で、脂肪肝の治療は体重を5〜7%減らすことが中心だとお伝えしました。ただ、それを自力で成し遂げるのが簡単でないことも、日々の診療でよく承知しています。今回は、その減量を薬の力で後押しするという選択肢について、わかっていること・まだわかっていないことを含めて、率直にご説明します。
GLP-1受容体作動薬の中には、国内で肥満症の治療薬として正式に承認された注射薬があります。個人輸入品でも未承認薬でもありません。もともと体内にあるGLP-1というホルモンと同じように働き、胃から食べ物が出ていく速さをゆるめ、脳に「満たされた」という信号を送ります。その結果、無理なく食べる量が減っていきます。
当院がこの治療を行うのは、体重を減らすこと自体が目的ではありません。脂肪肝の改善を通じて、将来の肝硬変・肝がんのリスクを少しでも下げることを目的にしています。体重は、そのための手段です。
- この記事でわかること
- 脂肪肝に対して、この薬に何が期待できて何が期待できないのか
- 対象となる方、ならない方
- なぜ当院では自費(自由診療)なのか、費用と副作用
脂肪肝について、どこまでわかっている?
ここは正直にお伝えしたいところです。良い結果が出ている部分と、まだ証明されていない部分が、はっきり分かれています。
わかっていること
脂肪肝のある方を対象に、72週間GLP-1を投与した臨床試験があります。この試験は肝生検を必須とせず、線維化が進んでいない段階の方も広く含まれていました。
- 肝臓の脂肪が、MRIの測定でおよそ半分に減りました(プラセボと比べた比は0.50)
- およそ4人に3人が、肝臓の脂肪を30%以上減らしました
- ALT・AST・γ-GTPが18〜28%低下しました。健診で引っかかる、あの数値です
- 心血管疾患をお持ちの方を対象とした約3万人規模の長期試験でも、肝臓の酵素の低下と脂肪肝指数の改善が確認されています
まだわかっていないこと
線維化(肝臓の硬さ)への効果は、早い段階では証明されていません同じ試験で、肝臓の硬さについてはプラセボとの差が認められませんでした。複数の試験をまとめた解析でも同様です。線維化がある程度進んだ段階の方では改善が示されていますが、その手前で硬さまで戻せるかどうかは、現時点では分かっていません。この薬に期待できるのは、あくまで「肝臓の脂肪を減らし、数値を下げること」です。
効果を「数値」で確かめながら進めます
薬を使う減量でいちばん困るのは、「体重は減ったけれど、肝臓は本当によくなったのか」がわからないまま続けることです。体重計の数字は、肝臓の状態を直接には教えてくれません。
当院では、エコー(超音波)で「肝臓の脂肪の量」も「硬さ」も数値で測定できます。始める前に今の位置を数字で確認し、肝臓専門医が具体的な目標を設定します。数か月ごとに測り直せば、効いているのかどうかが数字で見えます。続けるべきか、やり方を変えるべきか、そしていつ終えるのかまで、数字を根拠に一緒に判断できます。
院長は日本肝臓学会認定の肝臓専門医であり、肝胆膵外科高度技能専門医でもあります。減量そのものではなく、肝臓を守るという目的から逆算して治療を組み立てます。また当院は胃カメラ・大腸カメラにも対応し、糖尿病・脂質異常症・高血圧といった合併症の管理から、必要な場合の高次医療機関へのご紹介まで、ひとつの窓口で続けて診ることができます。
※脂肪の量は減衰法(ATT)、硬さはせん断波による計測(SWM)で測定します。
対象となる方、ならない方
GLP-1受容体作動薬は、希望される方すべてにお出しできる薬ではありません。当院は自由診療であっても、国内で承認された肥満症の基準を厳密に守って処方します。美容・痩身のみを目的とした処方は行っておりません。
対象となる方
- BMI 27以上で、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・脂肪肝など、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある方
- またはBMI 35以上の方
- 食事療法・運動療法を行っても、十分な効果が得られなかった方
受けられない方
次に当てはまる方には処方できません甲状腺髄様がんの既往またはご家族歴のある方、多発性内分泌腫瘍症2型の方/膵炎の既往がある方/1型糖尿病、重度の胃腸障害のある方/妊娠中・授乳中、妊娠を希望される方/18歳未満の方、この薬にアレルギーのある方
診察のうえ、医学的に適応があると判断した方が対象です。対象にあたらない場合はお断りすることがありますが、その場合も脂肪肝そのものの評価と生活面のご相談は保険診療で承ります。
自由診療のご案内(公的医療保険は適用されません)
治療の内容
GLP-1受容体作動薬を週1回、ご自身で皮下注射します。0.25mgから開始し、4週ごとに段階的に増量します。当院では1.0mgまでを標準としています。薬だけに頼らず食事・運動の指導を並行して行い、腹部エコーによる肝臓の脂肪量・硬さの測定と血液検査で経過をみていきます。治療期間の目安は16週から約1年4か月です。効果が不十分な場合や副作用が強い場合は中止を検討します。
費用(すべて税込)
- GLP-1受容体作動薬 0.25mg 4週間分(1か月)15,000円
- GLP-1受容体作動薬 0.5mg 4週間分(1か月)20,000円
- GLP-1受容体作動薬 1.0mg 4週間分(1か月)27,000円
自由診療のため費用は全額自己負担となり、高額療養費制度の対象にはなりません。用量により月額費用が変わります。なお、肝臓の状態を調べる血液検査・腹部エコーは、健診で指摘された肝機能異常などに対する診療として保険診療で行います。
主な副作用
吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、食欲の低下、頭痛。多くは投与の初期や増量したときに現れ、続けるうちに軽くなっていきます。日常生活に支障が出る場合は、増量を止める、あるいは中止します。
重大な副作用
急性膵炎(強い腹痛が続く場合は、ただちに注射を中止してご連絡ください)、胆石症・胆のう炎(急な減量に伴って増えます)、低血糖(糖尿病のお薬を併用している場合)、脱水、腎機能の低下。
そのほかご承知おきいただきたいこと
急激な体重減少により筋肉量が落ちることがあります。治療を中止した後に体重が戻る(リバウンド)ことがあり、減量後の生活習慣を保つことが重要です。効果には個人差があり、すべての方に体重減少や肝臓の数値の改善が得られるとは限りません。税務上の取扱いについては、お住まいの地域の税務署にご確認ください。
お問い合わせ・ご予約
レリア津田沼 内科 内視鏡・肝臓クリニック TEL 047-409-1455
ご予約は画面右下の「WEB予約」または「LINE予約」からお進みください。
受診から開始までの流れ
初診・検査(保険診療)
健診の結果表をお持ちください。身長・体重を測り、これまでの経過と現在の治療、飲んでいるお薬を伺います。あわせて血液検査と腹部エコーで、肝臓の脂肪の量と硬さを数値で測り、ウイルス性肝炎など他の原因がないかも確認します。エコーは食事の影響を受けるため、可能であれば朝食を抜いてご来院ください。ここまでが、肝機能異常に対する通常の診療です。
結果のご説明と、選択肢のご相談
肝臓の状態を数値でお示しし、まずは食事・運動での改善を目指すのか、薬による減量を併せるのかを一緒に考えます。薬をご希望の場合は、対象にあたるか、期待できることとできないこと、費用と副作用をご説明します。ここでいったんお持ち帰りいただいてもかまいません。
後日、治療開始(自由診療)
ご納得いただけた場合に、あらためてご来院いただきます。自己注射の手技を院内で練習してから、0.25mgで始めます。ペン型の器具で針は細く、痛みを感じることはほとんどありません。
月1回の受診と、数か月ごとの再評価
月に1回、体調と副作用を確認しながら用量を調整します。3〜6か月ごとにエコーで肝臓を測り直し、目標に近づいているかを一緒に確認します。
よくあるご質問
薬を使えば、食事や運動はしなくてよいのでしょうか?
そうではありません。薬は食事療法と運動療法を補助するもので、置き換えるものではありません。やめた後に体重が戻りにくいかどうかは、この期間に生活をどう組み替えられたかで決まります。当院が薬だけをお出しせず、指導と検査をセットにしているのはそのためです。
どのくらいで効果が出ますか?
体重の変化は数週間から徐々に現れますが、肝臓の脂肪や数値の改善を評価するには数か月が必要です。臨床試験では72週かけて評価されています。焦らず、測りながら進めていきましょう。効果には個人差があります。
やめたらリバウンドしますか?
中止後に体重が戻ることは報告されています。だからこそ、いつまで続けていつ終えるのかを、始める前に一緒に考えておくことが大切だと考えています。当院では肝臓の数値を見ながら、その判断材料をお示しします。
太ってはいませんが、脂肪肝と言われました。使えますか?
この治療の対象にはあたりません。やせている方の脂肪肝には別の背景が隠れていることがあり、まずは原因を調べることが先になります。その診療は保険で行えますので、ご相談ください。
注射は痛くないですか?自分で打てるか不安です。
非常に細い針を使うペン型の器具で、おなかや太もも、上腕の皮下に打ちます。初回に院内で練習していただき、できるようになってからお帰りいただきますので、ご不安があれば繰り返し確認しながら進めます。
- この記事のまとめ
- GLP-1受容体作動薬は週1回の注射で、食欲を抑えて減量を助ける国内承認薬です
- 脂肪肝に対しては、肝臓の脂肪がおよそ半分に減り、ALTなどの数値が下がることが示されています
- 一方で、早い段階での線維化(硬さ)の改善は、現時点では証明されていません
- 当院はエコーで脂肪の量と硬さを測り、目標設定から効果判定、やめどきまでを数字で判断します
- 自由診療ですが、国内で承認された肥満症の基準は厳密に守って処方します
脂肪肝を指摘されて、どうにかしたいと思いながら手が止まっている方は、一度ご相談ください。まずは今の肝臓の状態を数字にするところから始めましょう。ご予約は画面右下の「WEB予約」または「LINE予約」からお進みいただけます。JR総武線「津田沼」駅から徒歩2分です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。本記事でご紹介した治療は自由診療であり、公的医療保険は適用されず費用は全額自己負担となります。効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるものではありません。治療の可否は診察のうえ医師が判断します。参考文献:Flint A, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2021;54(9):1150-1161./Newsome PN, et al. N Engl J Med. 2021;384(12):1113-1124./厚生労働省「最適使用推進ガイドライン」