2026年8月23日

健康診断の結果表に「AST」「ALT」「γ-GTP」といった見慣れない項目が並び、そこに「要再検査」と書かれていた。そんな一枚を手にして、このページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。体調はいつもどおりなのに、なぜ引っかかったのだろう。その数値が何を意味していて、次に何をすればよいのかを、順を追って整理します。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。かなり傷んでも自覚症状がほとんど出ないため、健診の数値が唯一のサインになることが少なくありません。「症状がないから大丈夫」とは限らない、というのが肝臓のやっかいなところです。
とはいえ、数値が高い=重い病気、ということでもありません。原因として最も多いのは脂肪肝で、生活習慣を整えることで数値が戻る方はたくさんいらっしゃいます。大切なのは、その中に混じっている「治療が必要な方」を見逃さないことです。
- この記事でわかること
- AST・ALT・γ-GTPが何を示している数値なのか
- どこからが受診の目安なのか(ALT 30という基準)
- 受診までに準備しておくとよいこと
AST・ALT・γ-GTPは、何を見ている数値?
いずれも肝臓の細胞に多く含まれる酵素です。細胞が傷つくと血液の中に漏れ出してくるため、血液検査で数値が上がります。つまりこれらは、肝臓が「今どのくらい傷んでいるか」を映す数値です。肝臓が働けているかどうか(機能そのもの)を直接測っているわけではありません。
- ALT(GPT)/ほぼ肝臓だけに含まれます。肝臓のダメージを最も素直に反映します
- AST(GOT)/肝臓のほか心臓や骨格筋にも含まれ、激しい運動のあとでも上がることがあります
- γ-GTP/肝臓と胆道に含まれます。飲酒、脂肪肝、薬の影響、胆汁の流れの滞りで上昇します
- ALP・総ビリルビン/胆道系の指標です。胆石などで胆汁の通り道が狭くなると上がります

ASTとALT、どちらが高いかにも意味があります
ALTのほうが高い場合は、脂肪肝や慢性のウイルス性肝炎でよく見られるパターンです。ASTのほうが高い場合は、アルコールによる肝障害や、肝臓の線維化が進んだ状態で見られます。筋肉に由来していることもあります。γ-GTPだけが高い場合は、飲酒量、脂肪肝、服用中の薬やサプリメントの影響を順に確認していきます。
ALTが30を超えていたら、一度ご相談を
健診の判定基準では「40まで正常」と書かれていることが少なくありません。ところが、30から40の範囲にも脂肪肝や慢性肝炎の方が含まれることが分かってきました。そこで日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言2023」として、ALTが30 U/Lを超えたら医療機関を受診してほしい、という提言を出しています。
「基準値内なら安心」とは限りません。健診の血液検査はあくまでふるい分けです。数値が軽度でも、エコーで見ると脂肪肝が見つかったり、肝臓が硬くなり始めていたりすることがあります。当院では、エコー(超音波)で肝臓の脂肪の量と硬さの両方を数値で測定できます。痛みも針もなく、10分ほどでいまの状態を“見える化”します。

考えられる原因は、ひとつではありません
「肝機能異常」とひとことで言っても、その裏側にある原因はさまざまです。頻度の高いものから挙げていきます。
- 脂肪肝(MASLD)/最も多い原因です。日本人成人の約30%にあるとされ、お酒をほとんど飲まない方にも、やせている方にも起こります
- アルコールによる肝障害/男性で純アルコール60g(日本酒約3合)、女性で40g以上が長く続くとリスクが高くなります
- B型・C型肝炎ウイルス/自覚症状なく進行します。C型は現在、8〜12週間の内服薬で95%以上の方からウイルスを排除できます
- 薬やサプリメントによる肝障害/処方薬だけでなく、市販薬・漢方薬・健康食品でも起こります
- 自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎/頻度は高くありませんが、中高年の女性に比較的多く、専門的な治療が必要です
原因によって、その後の道すじはまったく違います。だからこそ、「肝機能が高い」で止めずに、なぜ高いのかまで調べることに意味があります。
受診までに、できる4つのこと
過去の健診結果を集めておく
できれば数年分をお持ちください。「いつから、どのくらいのペースで上がってきたか」は、単発の数値よりもずっと多くを語ってくれます。
飲んでいるものを書き出しておく
処方薬、市販薬、漢方薬、サプリメント、プロテインまで。すべて書き出してお持ちいただくと、原因の絞り込みが早くなります。
受診前の1〜2週間、お酒を控えてみる
控えて数値が動くかどうかも、原因を知る手がかりになります。無理のない範囲でかまいません。
採血の直前に激しい運動をしない
筋肉からASTが漏れ出て、実際より高く出ることがあります。前日からの激しいトレーニングは避けておくと安心です。
数値にかかわらず、早めに受診していただきたいとき白目や皮膚が黄色い(黄疸)/尿の色が濃い紅茶やビールのような色になった/強いだるさや食欲不振が続いている/おなかが張る、足がむくむ/薬やサプリメントを飲み始めてから体調が変わった
当院での検査の流れ
当院は肝臓専門医・肝胆膵外科高度技能専門医である院長が、肝機能異常の原因検索を一度の来院からスムーズに進められる体制をとっています。
- 問診/飲酒量、体重の変化、服薬とサプリメント、輸血や手術の既往などを伺います
- 血液検査/肝炎ウイルス、自己抗体、鉄に関する指標などを必要に応じて追加します
- 腹部エコー/脂肪の沈着、肝臓の形、胆石や腫瘤の有無を確認します。痛みはなく10〜15分ほどです
- 脂肪の量と硬さの数値化/減衰法(ATT)で脂肪の量を、せん断波による計測(SWM)で硬さを測ります。ここが、経過観察でよい方と精密な検査が必要な方を分ける大切なポイントです
脂肪肝と診断された場合、治療の中心は生活習慣を整えることです。体重の5〜7%の減量で肝臓の脂肪や炎症の改善が期待できると報告されており、当院では無理のない目標を一緒に考えていきます。数か月後にもう一度測れば、その努力が数字として返ってきます。

よくあるご質問
お酒を飲まないのに肝機能が悪いと言われました。なぜですか?
飲酒習慣がなくても脂肪肝は起こります。肥満、糖尿病、脂質異常症、運動不足などが背景にあることが多く、これをMASLDと呼びます。やせている方に見つかることもあり、体型だけでは判断できません。
数値が少し高いだけでも受診したほうがよいですか?
ALTが30 U/Lを超えている場合は、一度確認されることをおすすめします。軽度でも慢性的に続く炎症は、年単位で肝臓を硬くしていくことがあるためです。調べて問題がなければ、それはそれで安心につながります。
検査はその日のうちに受けられますか?
血液検査と腹部エコーは、当日に実施できる場合があります。エコーは食事の影響を受けるため、可能であれば朝食を抜いてご来院ください。
放っておくと、どうなりますか?
多くの方はゆっくりとした経過をたどります。ただし一部では、炎症が続いた結果として肝硬変や肝がんに進むことがあります。裏を返せば、早い段階で手を打てば、その道すじを変えられる可能性が高いということです。
一度正常に戻れば、もう検査は不要ですか?
生活習慣が背景にある場合、数値は良くなったり戻ったりを繰り返すことがあります。年に一度は肝臓の状態を確認しておくと安心です。
- この記事のまとめ
- ALTが30 U/Lを超えていたら、一度受診をご検討ください
- 最も多い原因は脂肪肝。ただしウイルス性肝炎や薬剤性など、治療が必要なものが隠れていることがある
- 大切なのは数値の高さよりも、肝臓の脂肪の量と硬さ。当院ではどちらもエコーで数値化できます
- 過去の健診結果と、飲んでいる薬・サプリメントの一覧をお持ちいただくと診療が早く進みます
- 早く見つかれば、戻せる可能性は高くなります
健診の結果表を手に、まずは一度ご相談ください。今の肝臓の状態を数字にするところから始めましょう。ご予約は画面右下の「WEB予約」または「LINE予約」からお進みいただけます。JR総武線「津田沼」駅から徒歩2分です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。ご自身の症状や検査結果については、必ず医療機関でご相談ください。本文中の医学的内容は、日本肝臓学会「奈良宣言2023」および日本消化器病学会・日本肝臓学会の診療ガイドラインの考え方を参考にしています。