2026年10月15日

健康診断や人間ドックで「アミラーゼが高い」と指摘され、「膵臓の病気なの?」「症状がなくても病院へ行くべき?」と不安に感じていませんか。数値が少し基準値を超えただけでも、膵炎や膵臓がんとの関係が気になり、どう対応すればよいか迷う方もいるでしょう。
アミラーゼは、食べ物のでんぷんを分解する消化酵素で、主に膵臓と唾液腺でつくられます。血液中のアミラーゼの共用基準範囲は44〜132U/Lで、膵炎などの膵臓の病気のほか、唾液腺の炎症や腎機能の低下、体質的な要因でも高くなります。強い腹痛や嘔吐を伴う場合はすぐに受診が必要ですが、症状がない軽度の高値であれば、再検査で推移を確認していくことも少なくありません。
この記事では、アミラーゼが高い原因を膵臓とそれ以外に分けて紹介し、基準値の見方、受診や再検査の目安、原因を調べる検査方法を解説します。食事や飲酒、薬で注意したい点にも触れるので、健診結果を受け取って今後の対応に迷っている方は参考にしてください。
アミラーゼが高い主な原因

アミラーゼが高くなる原因は、膵臓の病気だけではありません。唾液腺の病気や、腎臓からアミラーゼが排出されにくくなる状態など、さまざまな理由が考えられます。
急性膵炎・慢性膵炎
急性膵炎は、膵臓に急な炎症が起こる病気です。炎症で膵臓の細胞が傷つくと、アミラーゼなどの消化酵素が血液中に流れ出て、数値が上がります。原因として多いのは胆石と多量の飲酒で、みぞおちから背中にかけての強い痛みを伴うのが特徴です。
慢性膵炎は、炎症を繰り返すうちに膵臓の組織が少しずつ硬くなり、働きが落ちていく病気です。初期にはアミラーゼが上がることもありますが、進行して膵臓の機能が低下すると、反対に正常範囲や低値になることもあります。
膵臓がん・膵のう胞などの膵臓疾患
膵臓がんなどで膵液の通り道である膵管が狭くなったり、ふさがれたりすると、血液中のアミラーゼが高くなる場合があります。ただし、膵臓がんがあってもアミラーゼが正常なことは珍しくなく、アミラーゼの値だけでがんかどうかはわかりません。
膵のう胞は、膵臓の中に液体がたまった袋状の病変です。のう胞があってもアミラーゼが正常な方は多く、膵管の変化や膵炎を伴う場合に、数値との関連を詳しく調べます。健診で膵管の拡張や膵のう胞も指摘されている場合は、その結果も医師に伝えてください。膵のう胞の経過観察については、当院の膵のう胞に関する記事も参考にしてください。
胆石・腸閉塞など膵臓以外の腹部の病気
胆石が胆管に詰まったり、胆管に炎症が起きたりすると、膵液の流れにも影響してアミラーゼが上がることがあります。そのほか、腸閉塞や消化管の穿孔といった急な腹部の病気や、卵巣の病気などでも数値が高くなる場合があります。これらの多くは強い腹痛などの症状を伴うため、症状の有無が原因を考えるうえで重要な手がかりになります。
耳下腺炎など唾液腺の病気
アミラーゼは、唾液をつくる唾液腺でもつくられています。耳の下にある耳下腺に炎症が起こる耳下腺炎(おたふくかぜなど)や、唾液の通り道に石ができる唾石症では、血液中のアミラーゼが高くなります。
耳下腺炎では耳の下が腫れ、唾石症では食事のときに顎の下が腫れたり痛んだりするのが特徴です。こうした症状がある場合は、唾液腺が原因の可能性を考えます。
腎機能低下・マクロアミラーゼ血症
アミラーゼは、血液中を巡った後、一部が腎臓から尿へ排出されます。腎機能が低下すると排出が滞るため、膵臓や唾液腺に異常がなくても、血液中のアミラーゼが高くなります。
マクロアミラーゼ血症は、アミラーゼが血液中の免疫グロブリンなどと結びついて大きな複合体となり、腎臓でろ過されにくくなる状態です。症状はなく、病気というより体質に近いものですが、ほかの病気が隠れていないかを確認したうえで判断します。健診のたびに軽度の高値を指摘される方の中には、この状態の方も含まれます。
アミラーゼの基準値と数値の見方
健診結果を読む際は、検査機関が示す基準範囲と比べてどのくらい高いか、過去の結果からどう変化しているかを確認します。
基準範囲は検査機関によって異なる
血液中のアミラーゼは「U/L」という単位で表示されます。日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の共用基準範囲は44〜132U/Lですが、測定方法によって検査機関ごとに基準範囲が異なることがあるため、まずは健診結果に記載された基準範囲と見比べてください。
通常の健診で測る総アミラーゼは、膵臓由来のP型と唾液腺由来のS型を合わせた値です。総アミラーゼの結果だけでは、どちらの臓器から増えているのかは判断できません。
過去の健診結果が手元にあれば、数値の推移も判断材料になります。毎回同じくらいの軽度高値なのか、前回より明らかに上がっているのかによって、その後の対応が変わります。
数値の高さよりも基準上限との比と症状が重要
アミラーゼが基準値を少し上回る程度であれば、一時的な変動や膵臓以外の原因も考えられます。一方、300U/L以上と比較的高い場合でも、それだけで急性膵炎や重い病気と診断されるわけではありません。大切なのは、基準上限の何倍くらい高いか、腹痛などの症状があるか、ほかの検査に異常がないかを合わせて見ることです。
日本の急性膵炎の診断基準では、次の3項目のうち2項目以上を満たすことなどで診断します。
- 上腹部の急な痛みと圧痛がある
- 血液や尿で膵酵素が上昇している
- 超音波やCTなどの画像で膵炎に伴う異常がみられる
海外では、膵酵素が基準上限の3倍を超えることを診断項目とする指針もあります。いずれにしても、症状と画像検査を組み合わせて判断するのが基本です。
アミラーゼ高値で受診・再検査する目安

受診の必要性は、症状の有無と数値の高さ、高値が続いているかどうかで判断します。目安は次のとおりです。
| 受診の目安 | 主な状況 |
|---|---|
| すぐに受診 | みぞおちや上腹部の強い痛み、背中へ広がる痛み、繰り返す嘔吐、発熱がある |
| 早めに受診 | 基準上限を大きく超えている、前回より明らかに上がっている、腹部エコーで膵のう胞や膵管の拡張も指摘された、体重減少や黄疸がある |
| 再検査で推移を確認 | 症状がなく、初めて軽度の高値を指摘された |
強い腹痛や嘔吐があればすぐに受診する
みぞおちや上腹部の強い痛みが突然始まった場合や、何度も吐いて水分がとれない場合は、すぐに医療機関を受診してください。痛みが背中に広がる、発熱する、ぐったりしているといった症状を伴うときは、急性膵炎のほか、早急な治療が必要な病気の可能性があります。痛みが非常に強い場合や意識がはっきりしない場合は、救急受診も検討しましょう。
受診時には、痛みが始まった時刻や場所、食事や飲酒との関係、吐いた回数などを伝えると、診察がスムーズに進みます。
症状がなくても高値が続く場合は一度相談する
症状がなくても、健診でアミラーゼの高値を繰り返し指摘されている場合は、一度医師に相談しましょう。前回より数値が明らかに上がっている場合や、ほかの血液検査、腹部エコーでも異常を指摘された場合は、早めの受診をおすすめします。
初めて軽度の高値を指摘され、症状もない場合は、診察のうえで数週間〜数か月後に再検査をして推移を確認することもあります。再検査の時期は、数値や体の状態に応じて医師が判断します。なお、健診結果に「要受診」「要精密検査」と記載されている場合は、症状がなくても指示に従って受診してください。
最初の相談先は内科・消化器内科
アミラーゼの高値を指摘された場合、最初の相談先は内科または消化器内科が一般的です。膵臓や胆道の病気が気になる場合は、消化器内科での相談をおすすめします。
受診時には、次のような情報があると診察の参考になります。
- 今回の健診結果と、過去の血液検査の記録
- 腹痛や背中の痛みなどの症状と、始まった時期
- 飲酒の習慣、使用中の薬やサプリメント
耳の下の腫れなど、唾液腺の病気を疑う症状が目立つ場合は、耳鼻咽喉科での診察が必要になることもあります。どこを受診すればよいか迷う場合は、まず身近な内科に相談して構いません。
アミラーゼが高い場合の検査方法
アミラーゼが高い原因を調べるには、アミラーゼがどこから増えているのかを調べる血液・尿の検査と、膵臓や胆道の状態を確認する画像検査を、必要に応じて組み合わせます。
アミラーゼ分画・リパーゼ・尿検査
原因を絞り込むため、次のような血液検査や尿検査を行います。
| 検査項目 | 主に調べる内容 |
|---|---|
| アミラーゼ分画 | 膵臓由来のP型と唾液腺由来のS型の割合 |
| リパーゼ | 膵臓の炎症などを調べる手がかり |
| 尿中アミラーゼ | 血液中の値と比較し、マクロアミラーゼ血症などを考える手がかり |
| 腎機能検査 | クレアチニンやeGFRによる腎臓の働きの評価 |
例えば、P型が増えていてリパーゼも高ければ膵臓の病気を、S型が中心であれば唾液腺の病気などを考えます。血液中のアミラーゼが高いのに尿中への排出が少ない場合は、マクロアミラーゼ血症が疑われます。
腹部エコー・CT・MRIなどの画像検査
膵臓や胆道の病気が疑われる場合は、画像検査で臓器の状態を調べます。腹部エコーはお腹の外から超音波を当てる検査で、胆石の有無や膵臓の状態を体への負担なく確認できます。ただし、膵臓は胃や腸の奥にあるため、腸のガスなどの影響で一部が見えにくいこともあります。
より詳しく調べる必要がある場合は、CTで膵臓や周囲の臓器、炎症の広がりを確認したり、MRI(MRCP)で膵管・胆管の形や膵のう胞を評価したりします。膵臓を胃の中から近い距離で観察できる超音波内視鏡検査(EUS)を行うこともあります。
当院では、血液検査や腹部エコーによる評価を行っています。CT・MRI・EUSなどの精密検査が必要と判断した場合は、対応できる医療機関へご紹介します。
アミラーゼが高いときの対処法

アミラーゼの数値だけを下げる共通の治療法はありません。原因がわかれば、その病気に合わせた治療や経過観察を行います。
診断後の治療と経過観察
急性膵炎では、入院して絶食や点滴、痛みを抑える治療を行うのが一般的です。胆石が胆管を詰まらせている場合は、内視鏡などで胆石を取り除く処置が必要になることもあります。慢性膵炎では、痛みへの薬物療法や栄養管理、禁酒などを組み合わせて治療します。
唾液腺の炎症にはそれぞれの病気に合った治療を行い、腎機能の低下が関係している場合は腎臓の状態を踏まえて対応します。マクロアミラーゼ血症のように、ほかに治療が必要な病気が見つからなければ、特別な治療はせずに経過を見ることもあります。
飲酒・食事・服薬の注意点
原因がわからないうちから、極端な食事制限を始める必要はありません。ただし、飲酒量が多い方や膵炎が疑われている方は、診断がつくまで飲酒を控えておくと安心です。すでに膵炎と診断されている方は、医師の指示に従って禁酒に取り組みましょう。
脂っこい食事を避けたからといって、アミラーゼが下がるとは限りません。食事制限が必要かどうかは診断や症状によって異なるため、自己判断で特定の食品を避け続けるのではなく、医師に相談してください。
また、一部の利尿薬や免疫抑制薬、GLP-1受容体作動薬など、副作用として膵炎が知られている薬もあります。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて使用状況を受診時に伝えましょう。薬が原因と思われる場合も、自己判断で中止したり量を変えたりせず、医師や薬剤師に相談してください。
まとめ | アミラーゼが高い場合は原因に応じた対応を
健康診断でアミラーゼが高いと指摘されても、必ずしも膵臓の病気があるとは限りません。膵炎や膵臓がんなどの膵臓の病気のほか、胆石などの腹部の病気、唾液腺の病気、腎機能の低下、マクロアミラーゼ血症などでも高くなります。
強い腹痛や繰り返す嘔吐がある場合はすぐに受診してください。症状がなくても、高値が続いている場合や前回より数値が上がっている場合、健診で再検査を指示された場合は、内科・消化器内科に相談しましょう。
当院では、肝胆膵高度技能専門医・肝臓専門医の資格を持つ院長が、健康診断で膵酵素の異常を指摘された方のご相談に対応しています。消化器外科医として膵臓の病気の治療に携わってきた経験をもとに、血液検査や腹部エコーで評価を行い、必要に応じて精密検査が可能な医療機関へご紹介します。数値の意味や今後の対応が気になる方は、当院の消化器内科へご相談ください。