2026年9月30日

健康診断や腹部エコーで「脂肪肝」と指摘され、「何科を受診すればよいのだろう」「症状がないのに病院へ行く必要はあるのだろうか」と迷っていませんか。脂肪肝について詳しく調べる場合は、消化器内科や肝臓内科が主な受診先です。近くに専門の診療科がない場合は、まず一般内科やかかりつけ医へ相談することもできます。
脂肪肝は自覚症状が乏しいことが多い一方、背景に代謝異常や飲酒習慣などがあり、肝臓の線維化が進んでいるケースもあります。「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、健診結果をきっかけに肝臓の状態を一度確かめておくことが重要です。
この記事では、脂肪肝で受診する診療科、受診を考えたいタイミング、主な原因、進行リスク、医療機関で行う検査、治療・改善のポイントについて解説します。健診で脂肪肝を指摘され、今後の対応に迷っている方は参考にしてください。
脂肪肝は何科を受診すればよい?

脂肪肝を指摘された場合、詳しく調べるなら消化器内科や肝臓内科が受診先の候補です。一方、近くに専門科がない場合や、糖尿病・高血圧なども含めて相談したい場合は、一般内科から受診しても問題ありません。
まずは、受診先ごとの役割を確認しておきましょう。
| 受診先 | 向いているケース |
|---|---|
| 消化器内科・肝臓内科 | 脂肪肝や肝機能異常を詳しく調べたい場合 |
| 一般内科・かかりつけ医 | 近くに専門科がない場合や、生活習慣病も含めて相談したい場合 |
詳しい検査は消化器内科・肝臓内科
脂肪肝について詳しい評価を受けたい場合は、消化器内科や肝臓内科が適しています。血液検査だけでなく、腹部エコーなどを用いて脂肪の蓄積や肝臓の形、線維化の可能性などを調べます。
特に、AST・ALTなどの肝機能異常が続いている方、腹部エコーで脂肪肝を繰り返し指摘されている方、肝硬度などを詳しく調べたい方は、肝臓を専門的に診る医療機関へ相談するとよいでしょう。
脂肪肝は症状の有無だけでは進行度を判断しにくいため、検査結果をもとに今後の経過観察や治療方針を考えます。
近くに専門科がない場合は一般内科
近くに消化器内科や肝臓内科がない場合は、一般内科やかかりつけ医に相談できます。脂肪肝の背景には糖尿病や脂質異常症、高血圧などが関係することもあり、内科でこれらをまとめて評価することにも意味があります。
診察や血液検査の結果から専門的な評価が必要と判断された場合は、消化器内科や肝臓内科へ紹介されることがあります。
「専門科が近くにないから」と受診を先延ばしにする必要はありません。まず相談できる内科を受診し、必要な検査につなげてもらいましょう。
脂肪肝で受診したいタイミング
脂肪肝は自覚症状が乏しいことが多いため、体調だけで受診の必要性を判断するのは難しい病気です。健康診断や腹部エコーの結果、肝機能の数値、併存する生活習慣病なども受診を考える材料になります。
次のような場合は、一度医療機関へ相談して肝臓の状態を調べることをおすすめします。
健診・腹部エコーで指摘された場合
健康診断や人間ドックの腹部エコーで脂肪肝を指摘された場合は、症状がなくても一度受診を検討しましょう。脂肪肝は自覚症状がなく、ASTやALTが基準範囲内のこともあるため、「数値が正常だから問題ない」とは言い切れません。
健診で指摘された段階で、過去の結果や体重の変化、生活習慣なども含めて評価してもらうと、その後の対応を決めやすくなります。健診結果や過去の検査結果が手元にある場合は、受診時に持参すると経過の比較に役立ちます。
AST・ALTなどに異常がある場合
脂肪肝に加えてAST・ALT・γ-GTPなどの異常を指摘された場合は、肝臓に炎症や障害が起きていないかを確認するため、医療機関へ相談しましょう。
数値の程度や線維化の進み具合は、AST・ALTだけでは判断できません。また、肝機能異常には脂肪肝以外の肝疾患が関係することもあります。
「脂肪肝があるから数値が高い」と決めつけず、ほかの肝疾患が隠れていないかも含めて評価します。
肥満・糖尿病・脂質異常症を伴う場合
脂肪肝に肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などを伴う場合は、肝臓の状態を一度詳しく評価することが勧められます。これらは脂肪性肝疾患と関連が深く、肝臓だけでなく全身の健康管理も必要になるためです。
受診時には、血糖や脂質、血圧、体重なども確認しながら、肝臓の状態と合わせて今後の治療・生活習慣の見直しを考えます。肝臓だけを切り離して考えず、全身の状態を一緒にみてもらうことがポイントです。
黄疸・むくみなど肝疾患を疑う症状がある場合
脂肪肝そのものは症状が乏しいことが多いため、黄疸やむくみなどがある場合は、単純な脂肪肝だけではなく進行した肝疾患なども考える必要があります。
皮膚や白目が黄色くなる、足がむくむ、お腹が張る、強い倦怠感が続くといった変化があるときは、健診の次回受診を待たず医療機関へ相談してください。
症状だけで肝硬変などの病気を判断することはできませんが、体調の変化がある場合は血液検査や画像検査などによる評価が必要です。
脂肪肝の主な原因と種類

脂肪肝は一つの原因だけで起こるとは限りません。現在は、肝臓への脂肪蓄積に加え、心代謝系危険因子(肥満や血糖・血圧・脂質の異常など)や飲酒量を踏まえて脂肪性肝疾患を分類します。
原因や背景によって治療・生活習慣の見直し方が変わるため、自分の脂肪肝がどのようなタイプなのかを知ることが重要です。
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)
MASLDは、肝臓に脂肪がたまり、かつ肥満、血糖異常、高血圧、中性脂肪高値、HDLコレステロール低値などの心代謝系危険因子を1つ以上伴う脂肪性肝疾患です。飲酒が主な原因ではない点が特徴で、脂肪肝の中でも多くみられるタイプです。
見た目が痩せている方でもMASLDに該当することがあるため、体重だけで判断せず、血糖・脂質・血圧なども含めて評価します。
なお、脂肪性肝疾患は代謝異常と飲酒量の組み合わせによって、MASLDのほか、後述するMetALDやアルコール関連肝疾患などに分類されます。従来のNAFLDから病名が置き換わっただけではなく、分類の考え方そのものが見直されています。
飲酒に関連する脂肪肝
継続的な飲酒によって、肝臓に脂肪が蓄積することがあります。飲酒量が多い状態が続くと、脂肪肝だけでなく肝炎や線維化などへ進むケースもあるため注意が必要です。
現在の分類では、代謝異常の有無と飲酒量を踏まえ、代謝異常と中等度の飲酒が重なるMetALD、飲酒が主体のアルコール関連肝疾患などに分けて考えます。
診察では、飲むお酒の種類だけでなく、1回の量や週に何日飲むかなどをできるだけ具体的に伝えると、肝臓への影響を考える材料になります。
薬剤・低栄養などによる脂肪肝
脂肪肝は、代謝異常や飲酒以外の原因でも起こることがあります。たとえば、一部の薬剤や急激な体重減少、低栄養などが、肝臓への脂肪蓄積に関係する場合があります。
そのため、肥満や飲酒習慣がない方でも、背景に別の原因がないかをみる必要があります。
受診時には、現在使用している薬やサプリメント、最近の体重変化、食事量の変化なども医師へ伝えてください。生活習慣や飲酒だけでは説明できない原因を探る手がかりになります。
脂肪肝の進行リスクと全身への影響
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまっていても大きな問題が起きない方がいる一方、炎症や線維化が進むケースもあります。また、MASLDでは肝臓だけでなく、心血管疾患など全身の健康との関連も考慮する必要があります。
肝臓の変化と全身への影響を分けて見ていきましょう。
肝線維化・肝硬変への進行
脂肪肝の一部では、肝臓の炎症が続くことで線維化が進み、肝臓が徐々に硬くなることがあります。線維化がさらに進行すると肝硬変に至り、肝がんなどのリスクが高まる場合もあります。
すべての脂肪肝が肝硬変へ進むわけではありませんが、症状が乏しいまま線維化が進むケースがある点には注意が必要です。
そのため、脂肪の蓄積量だけでなく、線維化のリスクも踏まえて経過をみることが重要になります。
心血管疾患など全身への影響
MASLDでは心代謝系の問題を併せ持つことが多く、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患との関連も指摘されています。
ただし、「脂肪肝があると心血管疾患になる」という単純な因果関係ではありません。肝臓と心血管疾患には、肥満や糖代謝異常など共通する背景もあります。
そのため、肝機能の数値だけを見るのではなく、血糖・脂質・血圧なども含めて全身を管理する視点が必要です。
脂肪肝で行う主な検査
脂肪肝を詳しく調べる際は、血液検査と腹部エコーなどを組み合わせます。それぞれの検査で分かる内容が異なるため、一つの結果だけで判断するのではなく、複数の情報から肝臓の状態を評価します。
脂肪の蓄積や線維化のリスクを調べる代表的な検査を見ていきましょう。
肝機能などを調べる血液検査
血液検査では、AST・ALT・γ-GTPなど、肝臓の状態に関連する項目を確認します。また、年齢・AST・ALT・血小板数から算出するFIB-4 indexを用いて、肝線維化のリスクを推定することもあります。
MASLDが疑われる場合は、血糖やHbA1c、中性脂肪、コレステロールなども確認し、心代謝系の状態を評価します。
血液検査だけで脂肪の量や線維化の程度を確定することはできないため、必要に応じて画像検査を組み合わせます。
脂肪の蓄積をみる腹部エコー検査
腹部エコーでは、超音波を使って肝臓を観察します。脂肪がたまった肝臓は通常より明るく見えることがあり、肝臓と腎臓の明るさの差などを手がかりに脂肪肝を評価します。
放射線を使用しないため被ばくがなく、体への負担が比較的少ない点も特徴です。
一方、一般的な腹部エコーだけでは、脂肪量や線維化の程度を詳しく評価しにくいこともあります。必要に応じて、脂肪量や肝硬度を数値で評価する検査を追加します。
肝脂肪量・肝硬度などの評価
超音波を利用した脂肪定量検査では、肝臓にどの程度脂肪が蓄積しているかを数値で評価できます。また、超音波エラストグラフィでは肝臓の硬さを測定し、線維化の程度を推定する材料にします。
肝硬度は炎症などの影響を受けることもあるため、測定値だけで線維化を確定するわけではありません。
血液検査や通常の腹部エコーなどと組み合わせながら、治療や経過観察の方針を考えていきます。
脂肪肝の治療・改善のポイント

脂肪肝の治療では、肝臓の脂肪だけを見るのではなく、原因となっている生活習慣や併存する病気に合わせて対応します。MASLDでは食事・運動・体重管理が中心となり、飲酒が関係している場合は飲酒習慣の見直しも必要です。
主なポイントは次のとおりです。
- 適正体重を目指して食事内容を見直す
- 無理なく継続できる運動を取り入れる
- 飲酒量や頻度を見直す
- 糖尿病・脂質異常症などを適切に治療する
原因や体格、持病によって適切な方法は異なるため、医師と相談しながら進めましょう。
適正体重を目指す食事の見直し
過体重・肥満を伴うMASLDでは、無理のない範囲で体重を減らすことで、肝脂肪や炎症、線維化の改善が期待できます。目安として、5%以上の減量で肝脂肪の減少、7〜10%程度で炎症、10%以上で線維化の改善につながる可能性があるとされています。
ただし、短期間で大幅に体重を落とせばよいわけではありません。極端な食事制限や急激な減量は避け、無理なく続けられる方法を選びます。
食べ過ぎを見直し、甘い飲み物や間食を控えるなど、取り組みやすいところから始めましょう。具体的な目標体重は体格や病態によって異なるため、医師と相談して設定します。
継続しやすい運動習慣
運動は、体重が大きく減らなくても肝脂肪の改善に役立つことがあります。有酸素運動や筋力トレーニングなどを、自分の体力や持病に合わせて続けることがポイントです。
短期間だけ強い運動をするより、歩く時間を増やすなど、日常生活の中で続けられる方法を取り入れる方が現実的です。
運動習慣がない方や、心臓・関節などに持病がある方は、無理に強度を上げず、医師に相談したうえで安全に取り組んでください。
飲酒習慣の見直し
飲酒が脂肪肝に関係している場合は、飲酒量や頻度を見直します。どの程度まで減らすべきかは、現在の飲酒量や肝臓の状態、代謝異常の有無などによって異なります。アルコール関連肝疾患が疑われる場合は、禁酒が勧められることもあります。
また、飲酒量が多く、酒量を減らした際に手の震えや発汗、不眠などが出たことのある方は、自己判断だけで急に対応せず、医療機関へ相談してください。
糖尿病・脂質異常症などの治療
脂肪肝に糖尿病や脂質異常症、高血圧などを伴う場合は、それぞれを適切に治療・管理することも必要です。
MASLDでは肝臓だけを治療対象として考えるのではなく、血糖、脂質、血圧、体重などをまとめて管理することで、全身の健康リスクにも対応していきます。
治療薬の選択は持病や肝臓の状態によって異なります。自己判断で薬を変更せず、主治医と相談しながら治療を続けましょう。
まとめ | 脂肪肝は消化器内科・肝臓内科へ相談を
脂肪肝を指摘された場合、詳しく調べるなら消化器内科・肝臓内科が主な受診先です。近くに専門科がない場合は、まず一般内科やかかりつけ医へ相談しても問題ありません。
脂肪肝は自覚症状が乏しい一方、一部では線維化が進み、肝硬変などへつながることがあります。血液検査や腹部エコー、肝脂肪量・肝硬度の評価などを受け、原因や進行度に合わせて食事・運動・飲酒習慣などを見直していきましょう。
当院では、日本肝臓学会認定 肝臓専門医による診療を行い、血液検査や腹部エコー、肝脂肪量・肝硬度の評価にも対応しています。健康診断や腹部エコーで脂肪肝を指摘された方、肝機能の数値が気になる方はお気軽にご相談ください。
当院の役割は、見続けることと、動くべきときを見極めることです。院長は日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医として、膵臓の手術に数多く携わってきました。膵がんの手術をしてきた立場だからこそ、「どの時点で、どの施設へつなぐべきか」が判断できます。通いやすい場所で経過を見ていき、必要なときには専門施設へつなぎ、条件を満たせば経過観察を終える。その判断までを一貫して担います。